「恋の渦」

オーディトリウム渋谷で10/14まで、21時からのレイトショーでの上映延長が決定しました!

 

「恋の渦」

監督 大根仁

シネマ☆インパクト配給

「恋の渦」

「恋の渦」

この映画に出てくるのは、部屋のあちこちに服ばかりが掛けられ、写真やポスターがベタベタと貼られた、ゴチャついた狭い部屋に暮らす男女9人。誰も彼も「こいつバカだな!」と言いたくなるような言動しかしないし、「こいつらどうしようもねえな!」と言いたくなるような関係性しか持っていない。

20代後半でろくな仕事に就いてない男たちは、口ばかりエラソーでオラオラで、チャラくてキンパツでやりたいことだけやって生きてりゃいいなって感じで、上昇志向もセンスもなくて多分バカだし、女たちは軽薄で安っぽく、濃い化粧をして、誰かに評価されることだけに必死で、趣味が悪くて、やっぱりバカだ。

 

ひとことで言えば、バカな男女が、いろんな組み合わせで、好きだの嫌いだの誰とあーしたいだの誰とこーしたいだの、これでもかってくらい下品な関係性を繰り広げる物語だ。物語というか、コイツらはこれからもずっとこんなことを続けていくんだろうな、と思わせる点では「日常」である。

バカな男女のしょーもない日常という、もう、このうえなくしょーもないシロモノを「恋」なんて呼べるか! と笑いながら、はたと、観客はいかに自分がバカげたしょーもない「恋」をしてきたかに気付かされるのだ。あなたの「恋」だって、わたしの「恋」だって、ハタから見たらこんなモンなのである。

 

劇団ポツドールが2006年に上演した戯曲「恋の渦」を映画化した本作品で脚本を手がけたのは、ポツドール主催の三浦大輔。会話と携帯電話での会話、画面上には出ないメールの文面が、過剰なくらいにみっちりと作りこまれた脚本で繰り広げられる「日常会話」がものすごい。

セリフが登場人物像を作る、というと当たり前のことのようだが、俳優たちの演技力を、細かすぎるセリフ回しで底上げするほどの緻密さで、まるで全編がアドリブみたいに見える。

シーンはすべてが4つの室内のみ。さらに、撮影にはCANONのEOS5Dと6Dを使用しているために、薄暗い室内でヘンに生々しく、音声も、ちょっと声を張り上げるとバリバリと割れてたいへんにウルサイ。

4つの部屋で、それぞれの男たちが声を荒げるシーンをバンバンと切り替えて見せる鬱陶しさに、こちらまで「うるせーよ!」と劇場のイスを蹴って、声を荒げたくなる。その瞬間、まんまと自分が監督の演出にハマっていることに気づくのだ。

冒頭まるまる13分、YouTubeで公開中!

 

この映画は山本政志監督の実践映画塾「シネマ☆インパクト」の企画の中で撮られた、まったくのインディーズ作品。山本政志監督といえば「ロビンソンの庭」でJAGATARAをサウンドトラックに起用して、明るい「庭」のシーンで「夢の海」がパーンと流れるのが印象的だった。大ヒット作となった「モテキ」の冒頭で大根監督がレコードショップFUJIYAMAの「やっぱ自分の踊り方でおどればいいんだよ。江戸アケミ」という看板のカットを入れてきた時、すでにこんなアプローチは想定済みだったのかもしれない。

撮影は4日間、予算ほとんどゼロ、出演者は全員無名の俳優で、これだけの映画をぶつけてくる。テレビドラマでも、ミュージックビデオでも、メジャー映画でも、インディーズ映画でも。どんなトコロでも、どんなステージでも自分のやり方で踊る大根監督の映画作りは、日本映画への挑戦だ。

DVD化の予定はなし。劇場へ急げ!

 

(文:中高下 惠)

地図の中心へ
交通状況
自転車で行く
乗換
ルートを検索