「鳥類学者無謀にも恐竜を語る」

鳥類学者無謀にも恐竜を語る
川上和人:著
技術評論社:刊

川上和人「鳥類学者無謀にも恐竜を語る」

川上和人「鳥類学者無謀にも恐竜を語る」

書籍のタイトルの付け方は、そりゃあ100万冊あれば100万通りあって当然なんだけど、ある程度の「傾向」はもちろん、ある。
この「鳥類学者無謀にも恐竜を語る」は、科学読物である。表紙の上の方に「生物ミステリー」とあるし、タイトルには「鳥類学者」、「恐竜」とあるわけで、まあ中身を読まずとも、この著者の川上和人さんが鳥類学者で、恐竜についての科学的な論証をしてる本なんだろうな、ということは、一見しただけで伝わってくる。

しかし、ある程度の本読みであれば、表紙を見ただけで…もしかしたらタイトルを聞いただけで、この本が堅苦しい科学論考だけで終わらないことに気づくだろう。それはわざわざ挿入された「無謀にも」にハッキリと現れている。

要するに、ちょっとふざけているのだ。

あー僕、鳥類学者でトリの研究ばっかりしてたわけで、恐竜の研究をずっと専門でしてきた学者さんにほんと申し訳ないんだけど、ちょっと恐竜のこと語ってみてもいいですかね? みたいなテレがあるのだ。

いやいや、内容としては至って真面目な科学読み物、なのである。恐竜の中には鳥類へと進化した種がいる=鳥類の祖先は恐竜である、という最新の(と言っても、この説が発表されたのは1970年代の話らしい)研究に基づき、現在はいない恐竜を研究するには、現在もたくさんホンモノが生きて飛び回っている鳥類の研究が限りなく活きてくるのではあいか、というテーマのもとに、さまざまな考証が論じられている。

特に、近年化石から発見され解析された、恐竜の羽毛の色やかたちと、鳥の羽毛を並列しながら論証していくあたりなどは、本当にワクワクする。なんだか、鳥を観る目も、手羽先のカラアゲを食べるときの感じも、ちょっと違ってくるような気がする。

この鶏皮のブツブツの遠い祖先に、羽毛をわさわさ生やした巨大な恐竜がいたのだ、自分がこれからモグモグいただくのは、あの巨大な恐竜の子孫なのだと考えると、鳥料理もまた一層味わい深い。

科学論証とはいえ、読み口は軽く、平易で、文章もうまく、 そしてやっぱり、ちょっと遊んでいる。特に脚注の遊びは楽しくて、ちょっと、ふざけている。 理系本にありがちな難解さはないので、気軽に読んでみてほしい。

(文:中高下 惠)