吾妻ひでお「アル中病棟 失踪日記2」(予告)

2005年に出版され、第34回日本漫画家協会賞大賞、平成17年度文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞、第10回手塚治虫文化賞マンガ大賞、第37回日本SF大会星雲賞ノンフィクション部門と、さまざまな賞を受賞した吾妻ひでおの「失踪日記」の正式な続編「アル中病棟 失踪日記2」が10月6日に発売されます。

吾妻ひでお「アル中病棟 失踪日記2」

吾妻ひでお「アル中病棟 失踪日記2」

「正式な続編」とわざわざ書いたのは、その後も2匹目のドジョウを狙った各出版社が、吾妻さんの「〜〜日記」という本を出しまくったからですが、そのいずれもがインタビューやホームページ上の日記の焼き直しで、書籍としての面白みはあったものの、マンガとしては、というより「作品」としては「失踪日記」に続くレベルのものではなかったからです。

それが、いよいよ前作と同じイースト・プレスから、正式な続編の(大事なことなので2度め)刊行、ということで、これは期待せずにはいられません。

 

正式なレビューは発売後に、ということで、まずは復習として「失踪日記」のレビューをどうぞ。

 

 

失踪日記

吾妻ひでお:著

イースト・プレス:刊

吾妻ひでお「失踪日記」

吾妻ひでお「失踪日記」

 

吾妻ひでおの作品を読んだのは、「格闘ファミリー」以来だから、かなり久しぶりなんだけど、ああ、こんなに漫画がうまいひとだったんだなあ、とあらためて思った。

実話に基づくストーリーは、確かにキツいんだけど、単に悲惨さだけをウリにした実録漫画としてではなく、笑えるギャグ漫画として成り立っているのは、現在こうして完成度の高い作品に仕上げられているという事実で、最終的に彼はこれが描けるほどに復帰できている、という安心感に裏打ちされているからだ。

それにしても、ガス屋で肉体労働をしていても、社内報に漫画を描いてしまうというエピソードには泣ける。デタラメに過ごした日々が“充電期間”になり、こうして傑作をものすることができるのは、作者の漫画家としての才能と“魂”のなせるワザなんだろうな、きっと。ワタシも頑張ろうっと。

(文:吉田メグミ)