坂本慎太郎「ナマで踊ろう」

きのこ雲が広がる背景をバックにスティール・ギターを弾く骸骨。

不穏のジャケットを象徴するように、坂本慎太郎の新作は不条理になりつつある社会を皮肉った問題作でした。(坂本慎太郎 『ナマで踊ろう』 初回限定紙ジャケット仕様 インストCD付 zel-012s 2,600円+税)

坂本慎太郎『ナマで踊ろう』

坂本慎太郎『ナマで踊ろう』

サウンド面では、昨年2013年に手に入れたというスティール・ギターが全編に使われてますが、カントリーというよりはムード歌謡のようなアレンジ。

ただ、それが彼特有のサイケデリックなグルーヴ感と相まり、浮遊感漂う<坂本慎太郎流スピリチュアル・ファンク>なサウンドに仕上がっています。

そして、注目の詞世界。
ゆらゆら帝国の作品にも参加していた中村楓子が歌う①「未来の子守唄」、穏やかな曲調とは対照的な歌詞が印象的な②「スーパーカルト誕生」、⑦「あなたもロボットになれる」、⑩「この世はもっと素敵なはず」で歌われる詞は、人類滅亡後の地球/終末を予期する退廃的世界観というよりは、“まともがわからない”若者へ向けた危機感のメッセージに受け取れました。

彼の歌やサウンドに潜む独特な隙間には、聴いた者が感じた思いを埋めてほしい、という意図があるようにも感じさせるコンセプチュアルな1枚。

ちなみに、前作発売時にはピーター・バラカン氏も絶賛しラジオでもオンエアしたインスト・ヴァージョン。
今回は通常盤にもインスト収録ボーナスCDが付いています。こちらも聴きもの。

このアルバムがCDショップ大賞を受賞したら痛快ですね。

(文:森 陽馬)

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