今日はボブ・ディランです。
ディランに関しては門外漢の僕が、来日公演も終わってしまっているこのタイミングで書くことをお許しいただきたいと思います。
1973年に発表された『ディラン』というアルバムは、彼にしては異色といえる、他の人が書いた作品を取り上げたカヴァー・アルバム。
トラディショナルなものがあれば、ジェリー・ジェフ・ウォーカーやジョニ・ミッチェルなどのように同業のシンガー・ソングライターものも含まれています。
ディランもこんな曲を歌うんだ!、という驚きが当時はすごくありましたが、今思うと、なるほど…と思う曲が多いですね。
その中からエルヴィス・プレスリーのバラード名曲として知られる「好きにならずにいられない」のカヴァーを。
ディランはわりとストレートに歌っています。
オルガンはアル・クーパー、間奏で聴けるいい雰囲気のギター・ソロはデヴィッド・ブロムバーグでしょうか。
1961年制作映画『ブルー・ハワイ』の中で歌われて大ヒットした曲ですが、ディランも『ブルー・ハワイ』の映画を観たのかな、なんて考えると楽しくなります。
なお、このアルバムはディランが自分の意志で発表したものではなく、契約が残っていたためCBS側が勝手に未発表曲(『セルフ・ポートレイト』と『ニュー・モーニング』のセッションで録音されたもの)を編集して発売したものでした。
そのため、永らくきちんとした発売がされていませんでしたが(42枚組というボックスに入ったりしましたが)、来日ということもあって日本ではめでたく紙ジャケで単体発売されています。
(文:森 勉)
★ボブ・ディラン『ディラン』(国内CD 限定盤 解説・歌詞・対訳付 SICP-30488 2,100円+税)