『君が生きた証』『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』

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大学構内での銃乱射事件で息子を失った主人公のサム(ビリー・クラダップ)が失意の内に会社を辞め、一人でボート暮らしをするようになる。
2年後のある日、遺品の中に息子が残した歌を見つける。その歌に息子の生きた痕跡を見つけようと、サムはギターを爪弾き始める……。

 

主人公サムと、その相棒クエンティン(アントン・イェルチン)。親子位、年の離れた二人を中心にストーリーは展開する。
今作で初メガホンを取るのは64歳のウィリアム・H・メイシー。彼自身もライブハウスのマスター役で出演している。
暗いテーマの映画だが、全体的に瑞々しい音楽映画で、無理に話を作っていなくて好印象。映画好き、音楽好きな友人に勧めたくなる作品だ。

 

この作品で主人公サムの相棒を演じたアントン・イェルチンは、『アトランティスのこころ』に主人公の子供時代の役で出演し、話題となった。また、J・J・エイブラムス監督の『スター・トレック』ではナビゲーター役のパヴェル・チェコフ役で出演。続編の『スター・トレック イントゥ・ダークネス』では思いもよらぬ大活躍をしている。

 

彼の出演作で、もうひとつオススメしたい作品がスティーヴン・ソマーズ監督の『オッド・トーマス 死神と奇妙な救世主』だ。

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原作はディーン・クーンツ。アメリカではスティーブン・キングと並び称されるホラー作家である。ホラー映画のようなタイトルではあるが、設定や音楽、カメラワークなどで軽い感じの作品に仕上がっていて、たいへんに鑑賞しやすい。

 

カルフォルニアの平凡な街に暮らすオッド・トーマスは死者の霊が見える以外は平凡な青年。ある日、彼はこの街に、惨劇の匂いに集まる悪霊ボダッハが大量に現れ始めている事に気付く。果たして起ころうとしている惨劇を彼は止めることができるのか……。

 

アントン・イェルチンはこの平凡な主人公を実にうまく演じているし、ウィレム・デフォーら他の共演者も好演。登場人物たちの機微に触れる演技が素晴らしい。

 

僕はだいぶ前に原作を読んでいてからの鑑賞だったが、建物や街の雰囲気など原作そのままのようで驚いた。
最後のあたりBadly Drawn Boyの「In The Air」が流れるシーンでは涙してしまった。
良作だが、何故か本国アメリカでは公開されていなく、続編の期待が薄いのが残念。

 

文:青木雅也
音楽、映画、料理、読書好きの歯科技工士。 無類の活字中毒。手持ち無沙汰だと中吊り広告からアルバイト情報誌、カタログギフトまで読み漁る。