「手帳術って何だ?」

手帳にまつわる色々な面倒くささを解決する本が出た。

手帳術って何だ?

手帳術って何だ?

kindle版「手帳術って何だ?」500円、ステイショナー刊 高畑正幸、舘神龍彦、納富廉邦著

 手帳の選び方とか、手帳の使いこなし、手帳術、といった文章やセミナーは、沢山あるし、秋以降、年末にかけて、メディアも店舗も、手帳で溢れる。しかし、実際の所、手帳について、本当の意味で網羅的に書かれた文章は意外なほどに少ないし、選び方、といっても、それを書いたり講義したりしている当人も、実はそれほど多数の手帳を使った経験があるわけではない。これは、実際に使ってみれば分かるのだけど、手帳と言うのは使い比べが極端に難しい製品なのだ。何故なら、どれほど自分に合わない手帳だろうと、手帳でさえあれば、手帳の役割を果たしてくれるから。つまり、並行して手帳を使おうとしても、どれか一つで「実用」という面では足りてしまうから、他の手帳を単独で使う時とは使い勝手が違ってしまうのだ。つまり、どれくらい自分にとって有益だったか、という点での比較ができない。手帳術、と言った時に、結局、様々な人が使っている手帳の紙面を見せて、そこから、何らかの「便利」を抽出するとか、偉い人の使い方を真似する、というスタイルを取るしかないのは、手帳という、あまりにパーソナルなツールの持つ特性みたいなもの。

 という具合に、手帳というのは面倒くさいもので、手帳の達人といったところで、普通の人よりも少しは使っている、という程度で、実際の所、普通に手帳を使っている人とそれほどの差はないし、手帳メーカーにしたところで、「作る」と「使う」は全く違うし、メーカーは可能性を売るわけだから、メーカーに聞けば正解が分かるわけでもない。だからこそ、ほぼ日手帳では、毎年のように使い方についての本を出すし、能率手帳もそうだし、去年はMARKSも出した。それらは、ユーザーに向けてのヒント集ではあるけれど、その先はユーザーに委ねられる。結局、自分は手帳で何がしたいのか、だけが問題になる。

 ということで、一度、距離を置いて手帳を俯瞰しながら、その歴史と現在と未来を考えてみよう、という試みが、文具王高畑正幸、手帳王子舘神龍彦、小物王納富廉邦の三人で行われた手帳を巡る鼎談。その内容を収録した本が、今回、AmazonのKindleから電子本として出版される。2010年の、手帳術全盛の時代と、2013年の手帳術崩壊の時代の鼎談が収録されているのだけど、これが、図らずも、手帳術の隆盛と崩壊を中心に、手帳の面倒くささと、でも、やっぱり無いと困るよね、という部分を、みんなで考えてみたら、意外に予言書みたいになっちゃった、というような内容になってしまっている。難しい事は言っていないにも関わらず、あまり従来の雑誌の手帳特集とか、手帳に関するセミナー、手帳術の本なんかには全然出てこない、でも、なんだかモヤモヤしていた部分に切り込んだ、手帳に関する基本図書のような本になっているので、よろしく、という、これは、その宣伝文。面倒くさくてすみません。

(文:納富廉邦)